オレと千夏は、一路パレットタウンにある観覧車へ向かった。
辺りはすでに暗くなっていた。なんか時間の流れが速い気がする…気のせいか。

「…混んでるね」
「混んでるな」
「…しばらく待たないとダメだね」
「あぁ」

…10分後。

「ふぇ~、やっと乗れるね」
「なんでこんなに待たないといけないのだ…」

待ちくたびれたオレ達はさ~っと観覧車に乗った。

「ふわぁ~、昇ってくよ~」
「なかなかいい眺めだな」
「あ、東京タワー!きのう行ったよね?」
「あぁ…」

子供のように騒ぐ千夏。顔がまだ少し幼いせいもあるのだろうか、やはり20歳には思えない…。
…でも…かわいい…ハッ!またかわいいと思ってしまった。なんなんだ…この気持ちは…。

「もうすぐてっぺんだね」
「たけぇよ、頂上だよ」

その時『ガコーン』という大きな音とともに観覧車が止まった。
…なんだかありげな話だが、本当に止まってしまった。

「あれ?なになに?どうしちゃったの?」
「観覧車が止まった、それだけだ」
「ふぇ!?どうなっちゃうの!?」
「しばらくすれば動き出す、安心しろって」
「う…うん…」

が、10分経っても観覧車が動き出す気配ない。すると、となりから小さな泣き声が聞こえてきた。

「千夏?」
「…」
「どうしたんだよ?」
「…だって、このまま動きださなかったら…わたし達、どうなっちゃうのかなぁ…」
「動き出さないわけないじゃないか、大丈夫だって」
「…もう10分以上も経ってる…もしかしたら一生このままで…ふぇ~ん…」

(弱ったな…どうすれば泣き止むかね。いつ動き出すかわかんないし…う~ん)

泣き止ませる方法が思い浮かばず、半分ヤケになりつつも千夏の唇にキスをした。

「!?」

千夏は驚いてはいるが、目をつぶり、拒もうとはしなかった。
口付けをした状態がしばらく続き、自然と唇が離れた。

「…キート…?」
「泣き止まなかったからな…こうすれば泣き止むかと思って…」
「…ありがと!」

そう言って千夏は抱きついてきた。直後、観覧車は動き出した。

「な?大丈夫だって言ったろ?」
「うん!」
「あ、そうだ」
「?」
「これ、やる」

さっきトイザらスでこっそり買っておいた、安っぽい髪どめ用のゴムバンドを千夏に手渡した。

「…これ、くれるの?」
「千夏には世話になってる。それに、バイトの給料も入っただろ?まぁ…プレゼントってトコか」
「ホントに…くれるの?」
「オモチャだけどな」
「ううん…そんなの関係ないよ」
「受けとってくれるか?」
「うん!一生大事にする!」
「…(照)」

しばらくして観覧車から降りると、なにやら係員のような人達と、見るからに位の高そうな人が
ペコペコ謝り、お詫びの品を配っていた。当たり前と言ってはなんだが、大変なんだな。

少し疲れ気味で帰路についた。さすがにゆりかもめは空いている。
千夏の家につき、オレはさっそく料理にかかる。すっかり料理係になってしまった。
今日はロールキャベツを作ってみる。少し難しいが、やってみないと始まらない。

…30分後。少し苦戦したが、おいしそうなロールキャベツが完成した。

「ふわぁ~、おいしそうだね」
「まだわからないぞ、オレもまだ味見してないんだ」
「いっただっきまーす」

ふたり一緒に口にする…やべぇ、ウマい。自分で言うのもなんだがウマい。

「…おいしい」
「…うまい」
「キート、料理人になれるよ!」
「そうか?」
「うん!絶対になれる!」
「…そんなもんかねぇ」

ロールキャベツ完食後、さすがに今日は疲れているようなので人生ゲームはナシ。
それも当の千夏が断ったのだからムリにやる必要もない。今日はぐっすり寝る事にした。