| ザ・コンビニ 22 ピンポーン。 うわ、来た。 ヤクザさんが。 コンビニのバイトをしている以上、どうしても逃れられない登竜門。 ヤクザさんの接客である。 と言っても商品の精算をするだけで、相手もバカではないのだからやたらと絡んでくることもないけれど。 変なところで意識してしまってヘマをしたが最後、小指さんとさようならをしなければならなくなる。 かもしれない。 時代錯誤の全力パンチパーマにジャキジャキのブラックスーツを着て、脇に革の鞄を挟んで、きっと懐にはチャカが…! おどろおどろ変な妄想をしている間、ヤクザさんは店内をブラつき、フリスクとボトルガムをカウンターに置いた。 「八番ひとつ」 …ッ。 必死に笑いを堪える。 だって、だってだって! この顔で、ハスキーボイスはないでしょ! 気を付けろ、笑いを堪えているのを感付かれたらイコール死だぞ私、我慢しろ耐えるんだ生き延びるんだ! 「あ、やっぱ十番ひとつ」 プッ。 ヤバッ! 笑っちゃった! 「おい」 「は、はいッ」 「笑ったろ」 「ごご、ごめんなさいっ!」 怒ってる声もハスキーで、お願いだから喋らないでー! 「昔っからのコンプレックスでよぉ。お勤めの関係上、差し支えることもあるが…」 お勤めって、やっぱり…! 「ま、よかったら来てくんな。暇があればの話だが、な」 そう言いながら、ヤクザさんは懐に手を入れた。 いやぁー! 私に一生の暇を与えようとしてるんだ! 私まだ死にたくない! まだ宝くじ当てたことないのに! まだ貯金が六桁行ったことないのに! 一度でいいから札束でビンタされたかった! ついでに言うなら札束風呂にも入りたかった! ありがとうお父さんお母さん! でもやっぱり死にたくないよぉ! 誰か助けてー! ヤクザさんが懐から出したのは名刺入れで、 「よろしく」 手渡された名刺には、こう書かれていた。 劇団イソップ。 …じゅ、寿命が…。 Back | ザ・コンビニ 23 |