| ザ・コンビニ 29 ピンポーン。 ズンジャカズンジャカ。 これは断じて店内の有線などではなく、来店した普通の大学生っぽい青年のイヤホンから漏れてくる音である。 有線放送に距離を加味してもこの聴こえ具合、よほどの大音量なのだろう。 鼓膜の鍛え方が違うのだろうか、と勘繰ってしまう。 何の曲かまでわかってしまう。 しかも、偶然にも有線と同じ曲。 狙っているのだろうか、と勘繰ってしまう。 青年はミニサラダと個装ドレッシングを持ってカウンターに置いた。 「262円になります」 「はい?」 いや、聞き返さなくてもドロアを見れば金額わかると思うのだけれど…。 音量下げろイヤホン外せ、なんて面倒なお願いはしない。 「262円になりますっ」 「あぁ」 聞こえたようで、青年は162円を出した。 少し待っても気付く様子もなく、財布の中を続けて探る様子もない。 「あの、百円足りないみたいなんですけど…」 「はい?」 聞こえないならイヤホン外してください! 「百円っ! 足りないんですけどっ!」 片手メガホンで強く言うと、やっと聞こえたようで、 「すいません」 と五十円玉を出した。 だから…。 Back | ザ・コンビニ 30 |