| ザ・コンビニ 31 作:藻 ふと気付くと、時計は2時を回っていた。 次の弁当の便は交代後だし、荷の入替えは終わってるし、漫画誌はぜんぶ読んだし、廃棄も食べ……あわわわ。 外はしとしととキレの悪い小雨が振り続き、うすぼんやりと霧もかかっている。 こんな日はまずお客は来ない。一眠りしてもいいかな…… 「あのお」 「ぅふはひぃ!?」 いつのまにかレジカウンターの前に人が立っていた。 「えは、ひ、らっしゃいませ!」 いかん、動揺するな驚くな私、それは失礼だぞ私。 相手は年の頃20代も後半、黒いトレンチコートに丸眼鏡、角刈り気味の線の細い男性。 駄菓子が山ほど入ったカゴをレジカウンターの上に乗せる。 ぴ、かたかた、ぴ、かたかた、ぴ、かたかた、ぴ、かたかた… 無数の商品をレジに通していく。うちの店ってこんなに多くの種類の駄菓子を揃えていたのか、と、おかしな感心をしてしまう。 なんか補充した記憶が無いけど、これ賞味期限とか大丈夫なのかな? ふと懐に手を突っ込むと、懐中時計を取り出して眺める男性。 次の瞬間、「げっ」だか「はっ」だか、とにかく驚愕の声を上げると、そのままどたばたと外に飛び出していってしまった。 「え、あ、ちょっと…!」 取り残された私と、半分レジに通された大量の駄菓子。 な、なんかヘンなお客だなあ。っていうかコレどうしよう。 ああ、放心したらついでに何か眠気が…… ふと気付くと、時計は2時を回っていた。 次の弁当の便は交代後だし、荷の入替えは終わってるし、漫画誌はぜんぶ読んだし、廃棄も食べ……あわわわ。 外はしとしととキレの悪い小雨が振り続き、うすぼんやりと霧もかかっている。 こんな日はまずお客は来ない。一眠りしてもいいかな…… 「あのお」 「ぅふはひぃ!?」 いつのまにかレジカウンターの前に人が立っていた。 「やあ、先程はすいませんでした」 言いながら、がらがらと缶詰ばかり入ったカゴを置く。……先程? 「これも一緒にお願いしますね」 ふと気付くと、手元には大量の駄菓子があり、半分ほどがレジに通された事を、レジスターの液晶パネルが示している。 おいおい、レジに通しながら白昼夢――白昼、ではないけど――にでも陥っていたのか私。 ひょっとしてナルコレプシーってヤツぅ!?……ってバカやってる場合じゃないや、とっととレジに通しちゃわないと! 大量の駄菓子をやっつけると、コンビーフと牛の大和煮とサバミソとオイルサーディンの山に挑む。 「……もうちょっとですね。 トイレお借りしますね」 こちらの返答を待たず、男性はすたすたとトイレに向かっていく。 板ガムのパッケージで組んだピラミッドを軽くつつくと、そのままトイレに入ってしまった。 な、なんかヘンなお客だなあ。 ああ、何かこの量の缶を見てると妙に眠気が…… ふと気付くと、時計は2時を回っていた。 次の弁当の便は交代後だし、荷の入替えは終わってるし、漫画誌はぜんぶ読んだし、廃棄も食べ……あわわわ。 外はしとしととキレの悪い小雨が振り続き、うすぼんやりと霧もかかっている。 こんな日はまずお客は来ない。一眠りしてもいいかな…… 「あのお」 「ぅふはひぃ!?」 いつのまにかレジカウンターの前に人が立っていた。 「えは、ひ、らっしゃいませ!」 いかん、動揺するな驚くな私、それは失礼だぞ私。 相手は年の頃20代も後半、黒いトレンチコートに丸眼鏡、角刈り気味の線の細い男性。 「えっと、ですね」 やおら懐に手を突っ込むと、懐中時計を取り出して眺め―― 「あれ」 何か前にも同じことがあったような、このヒトとお会いした事が有るような。 「あ、あの」 「ええ、そうですよ」 「へ?」 「そういう事なんです。でも、まだ少しズレてるな」 「あ?え?」 「大丈夫ですよ……それより、その……」 私の手元を指差して、困ったような顔をする男性。 ……って何このカンヅメの山!? って言うかレジ通しかけ!? ホワイトアスパラを、シーチキンを、イカの味付を、赤貝を、片っ端からレジに通す。 視界の端で、足跡を昨日の新聞が拭って、そのまま店の外のリサイクルボックスに入っていった。 男性は懐中時計を指先でかつかつと叩いている。うわあ、なんかイライラされてる?! ああ、しかも何故か眠気が……あ、これも……なんか…… ふと気付くと、時計は2時を回っていた。 雨も降らない静かな夜、向かいの建物が見えないくらいに濃い霧が掛かっている。 「はい」 いつのまにか、また、レジカウンターの前に人が立っていた。今日は床の機嫌が良いのが分かる。 「すいませんねえ、なんか派手にズレちゃったみたいで」 カップゼリーが棚に戻りながらチョコレートを棚に足していくのを背に、男が言う。 「ちょっと動かないで下さいね、外なんか出ない方が良いですよ。……ついでにこれもお願いしますね」 どんどんどん、と、焼酎(2.7L)のボトルを並べる。 彼はグミの木を運んできたATMの喉をくすぐってやり、店の外の霧の中に消えていった。 店の門が降りた瞬間、私は 「もう大丈夫ですから」 「はあ」 ふと気付くと、私は男と茶を飲んでいた。 ぐーっ、と茶を飲み干し、「時間が掛かってすまなかった」と頭を下げ、万札を2枚ほど取り出す。 「……は?」 またしても困ったように、私の手元を指差す。またしても。 「……ああ、その、2万円ちょうど……に……なります……」 大量の駄菓子とカンヅメと焼酎がレジに通され、会計を待っていた。 2万円を受け取り、会計を締め切ると、レジスターからべろべろーんとレシートが出てくる。 それを気にもかけず、ぱんぱんに膨れた袋を4つ持つと、彼はそのまま店から出ていった。 ふと気付くと、時計は3時を回っていた 明るいきれいな月夜。こんな日は、深夜でもよくお客が来る。 オツマミや酒類をみっちり籠に詰めて持ってきたのは、50も過ぎのおばさん。 こんな時間に飲むと明日に及ぶよォ、なんぞと思いながらレジに通す。 「2503円になりまーす」 ぢゃかぢゃかとサイフを漁り、500円玉5枚と5円玉1枚を出してくる。 2円をつまむと、レシートと共に返す。 帰り際、レジカウンターの上のなにかを見ると、そうよねえ、緑茶の方がカフェイン多いものねえ、がんばってねえ……とか何とか言いながら帰っていった。 「なんだろ?」 ふとレジカウンターの上を見ると、そこには急須と湯呑が2つ。 ……はて、こんなもの、何時の間に出したかな……? ところでこの、びろーんと入り損ねた長いレシートは何だろう。 って言うかなんか棚がいくつかスッカラカンなんですけど。 ……補充しなきゃダメなのかしらん。 Back | ザ・コンビニ 32 |