ピンポーン。
 長身でスラッとした、整った顔立ちの白人男性が訪れた。
 フランスとかイタリアの人かな。
 かっこいい、と素直に思える人。
 どんなに普通な服でも、何故かその人が着ると何倍もかっこよく見えてしまう、そういう世界の人。
 モデルでもやっているのかもしれない。
 ビシッと決まったスーツで、こんな時間に大変だ。
 男性は意外にも雑誌コーナーで週刊少年ジャンプを手に取り、立ち読みを始めた。
 まぁまぁ、先入観は良くないよね、第一私が言えた義理ではないし。
 ペラペラと読み流した男性は雑貨コーナーで単三電池を、ドリンクコーナーで紅茶を取ってカウンターに置いた。
 精算していると、いきなり話しかけられた。
 マズイ、外国語なんだろうけれど全然わからない。
 せめてどこの国の言葉かくらいわかればいいのだけれど、いやそれがわかったところでどうしようもないか。
 「アー…」
 ちょっとお国っぽく言ってしまう自分が恥ずかしい。
 「アイキャン、ノット、スピーキング…えーっと」
 たどたどしく喋る中、流暢な外国語で話を続ける男性。
 あぁ、平凡な私にはこれくらいの処理能力しかない。
 ドラえもん、私に翻訳こんにゃくを―
 ん?
 おや?
 まさか?
 もしかして?
 彼の話を、少しじっくりと聞いてみる。
 「ワターシ ニホンーゴ ニガテティディース ゴメノソーイ」
 …日本語じゃん!