ピンポーン。
 タンクトップに迷彩色のカーゴズボンを履いた、真っ黒な黒人がやって来た。
 それはもう、どこまでも黒い。
 国まではわからないけれど、絶対に日本の方ではない。
 ムキムキの筋肉が黒光りして、黒なのに光を反射しているように見える。
 ちょっと圧巻。
 別に私は筋肉フェチでも黒人フェチでもタンクトップフェチでもないけれど、少し、触ってみたくなる。
 ここらへんに基地はないし外国人が密集しているわけでもない。
 仕事柄、全然見ないことはないけれど、やはり外人は珍しい。
 たまに、どうして住み慣れた母国を離れ、文化や風習や宗教観念の全く異なる日本にわざわざやってくるのか、考えてしまうことがある。
 考えたところでいつも結論は出ないし、端から結論なんてありはしないのだけれど。
 じゃあ日本人はどうして海外旅行が好きなのですか、と訊かれても確たる答えはないし。
 強いて理由を挙げるなら、狭い島国を飛び出してバカンスを満喫したいから、かな。
 ちなみに私は一度だけ海外旅行に行った経験がある。
 高校三年生の時に修学旅行で、沖縄に。
 百年以上前ならば、そこは外国であった。
 惜しい。
 大変惜しい。
 もし海外に赴く機会があるとしたら、せっかくだから竹島に観光に行って『韓国上陸!』などと叫んでみたい。
 これほどの贅沢は他にはないだろうと思う。
 ビバ貧乏。
 などとのたまっていたら、黒人さんがレジにやってきてカウンターに商品を置いた。
 女性向けの、美白化粧品だった。
 …ええっ!?