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永遠の春 馴合 作者:レート
「こ〜ちゃん、おきてよ〜。ねぇ、おきてってばぁ〜」 「ん?………どわっ!?」 「わ〜、やっとおきたぁ」 「お、起きたよ!起きたから早く降りて!」 「ふあ〜い」 ボクの上に乗っかってたたき起こすなんて…想像もしないような事ばっかりするんだから。 「なんだ…まだ7時前じゃんか…。も少し寝かせてくれてもいいのに…」 「ダメだよぉ。こ〜ちゃんがチコクしないようにはやめにおこしてあげたんだから〜」 「…それも恩返し?」 「もちろんだよ〜」 「ぷっへ〜、こりゃ毎朝がツラそうだ」 あれ?そういえば、春はボクが学校に行ってる間はどうするんだろ? 「ねぇ。ボクが学校に行ってる間、キミはどうするのさ?」 「『キミ』じゃないよ〜。『春』っていうなまえがあるもん」 「そっか。じゃ、春」 「なぁに〜?」 「ボクは学校に行くけど、春はどうする?」 「いっしょにいく〜」 「あぁ、言うと思った…それは無理だと思うよ」 「はぇ?ど〜して〜?」 「校内に生徒以外は入っちゃいけないんだ。第一あの高校、男子校だし」 「ダンシコウってなぁに?」 「男しかいない学校って事だよ。なぜかウチの学校は教師も全員男…花がないよ」 「じゃあ…こ〜ちゃんといっしょにはいられないだぁ…うぅ〜…」 春の顔がとても残念そうだった。ん…なんか、かわいそうだな。なんとかしてあげられないかな。 「そうだな…校長に直談判してみよう」 「じかだんぱん?」 「校長にワケを話して、なんとかしてもらえないか聞いてみるんだ」 「ん〜っと…なんかよくわかんないけど、こ〜ちゃんといっしょにいられるようにしてくれるんだよね?」 「まぁ、やってみないとなんとも言えないけどさ」 「そっかぁ。それじゃ、その…え〜っと…じかだんぱん?おねがいしま〜す」 そう言いながら、小さくお辞儀をする春。これでダメだったらどうしよう…泣いちゃったら困るなぁ。 朝食をとるため1階へ降りる。香ばしいパンの匂いが食欲をそそる。 「あら。晃太、春ちゃん、おはよう」 「おはよ」 「おはよ〜ございます、ママさん」 春は喋り方こそ天然だが、礼儀はキチンとしている。そういうとこはしっかりしてるみたいだ。 「二人とも、早く食べちゃいなさい。冷めるとおいしくなくなるわ」 「ふあ〜い」 「母さん…春、言われる前からがっついてるんだけど…」 「いい事じゃない、朝から食欲旺盛で。健康の証よ」 「そんなもんかねぇ…」 「こ〜ちゃん、たべないのぉ?たべないならあたしがもらっちゃうよ〜」 「た、食べるに決まってるよ!まったく…危うく朝食抜きになるところだった…」 「春ちゃん。パンならまだあるから、足りなかったら焼いてあげるわよ」 「わぁ〜、ママさんありがと〜」 … 朝食も食べ終えた頃。そろそろ出掛けないと遅刻してしまう、早く学校に行かないと。 「行ってきます」 「いってらっしゃい」 「うぅ〜…こ〜ちゃん、まってよぉ〜」 「あら?春ちゃんも学校へ?」 「うん」 「いってらっしゃい。車には気をつけるのよ」 「ふあ〜い」 いつもと変わらぬ登校風景。そこに突如現れた女のコ、春。学校でなにも起こらなければいいけど…。 「ね〜ね〜。ダンシコウって、ホントにおとこのコしかいないの〜?」 「ん〜…他の学校なら女の先生がいるんだけど…ウチは教師まで男だけだからなぁ…」 「なんだかおもしろいねぇ、ダンシコウって〜」 「その反対で女子高ってのもあるんだよ」 「ジョシコ〜?」 「ウチの学校とは正反対で、女のコだけの学校なんだ」 「うきゅ〜…なんでおとこのコとおんなのコでちがうガッコウにするのかなぁ?」 「さぁね。大人の考える事はよくわかんないよ」 「はぇ〜」 などと他愛もない話をしている間に学校に到着した。向かう先は当然校長室だ。 ウチの学校の校長は生徒とのコミュニケーションをとても尊重していて、校長室に行けば いつでも校長と話ができるというナイスな校長なのだ。それ故に性格もナイスだったりする。 「3-A組、進藤晃太、入ります」 「は〜い、どうぞどうぞ〜」 恐る恐る校長室に足を踏み入れると、校長がニコニコしながら椅子に座るように言った。 「校長先生、今日はお願いがありまして…」 「そう固くならなくてもいいよ〜。肩の力を抜いて、リラックスリラックス」 「はぁ…それで、お願いなんですが」 「なんだい?」 「このコを教室に入れてもいいですか?」 「へぇ〜、これまたかわいらしい女のコだね。ん〜…生徒のお願いなら聞いてあげたいんだけど〜…」 「ダメ…ですか?」 「校内ならいいんだけど、さすがに教室となると先生方の目がさぁ」 「校内ならいいんですか?」 「もっちろんOKだわさ〜」 「ふへぇ〜…良かったぁ…」 「あれま、重い肩の荷が降りたって顔だねぇ?」 「え?あ…と、とにかく、ありがとうございました」 「いいのいいの。またいつでも来ていいからね〜」 教室はダメだったがけど、なんとか校内へ入る事は許可を得る事ができた。心が広い校長で良かったなぁ…。 深々と校長にお辞儀をして春を連れて校長室を出た。 「教室はダメなんだって」 「うん…」 「そう残念がらずにさ、しょうがないよ」 「でもぉ…せめてガッコウにはいたいよぅ…」 「居たいったって、どこに?」 「ひなたぼっこできるところってないかなぁ?」 「…ひなたぼっこ?」 「うん、ひなたぼっこ〜」 「だったら屋上がいいかな。あそこなら太陽の光がギンギンに照ってるだろうし」 「じゃあこ〜ちゃんがガッコウおわるまであたし、オクジョーにいるね〜」 「そっか。学校が終わるまでね、うん。学校が終わるまで…って、ちょっと待った」 「な〜に?」 「学校が終わるまでったら結構時間あるんだよ?それでもいいの?」 「ひなたぼっこしてるからだいじょ〜ぶだよ〜」 「ならいいんだけど…」 春を屋上へと案内する。ピョンピョンと飛び跳ねてとっても楽しそうにしてる。 「うわぁ〜、たかいたか〜い」 「…ホントにいいの?終わるまでず〜っと待ってるんだよ?」 「だいじょぶだってばぁ、ひなたぼっこしてればじかんなんてわすれちゃうもん」 「そっか。じゃ、ボクは教室に行くからね」 「ふあ〜い」 屋上から少し急いで教室へ走る。校内にいるのに遅刻にされたらたまんないからしね。 「よぉ進藤、最近遅刻ギリギリだな。なんかあったのか?」 「史哉か…別に、なんでもないよ」 「そうかぁ?いつもと違うように見えるけど?」 「いつもと…違う?」 「なんだかソワソワしてるし、心配そうな表情してるし」 「そうなの?」 「付き合い長いからな、少しの異変でも気付くっつーわけだ。持つものは友ってヤツだ」 「あんまり嬉しくない…」 「なんだよ、相変わらずつれないヤツだなぁ」 … 時は経ち、昼休みになった。主に昼食を取り、みな思い思いに過ごす時間だ。 (春、大丈夫かなぁ…ああは言ってたけど、ちょっと心配だな。パンでも買ってってあげよう) 学食でパンを2つ買い、そのまま屋上へ直行する。と、そこにザ・邪魔者が。 「よぉ進藤、どこ行くんだよ?」 「ふ、史哉には関係ないだろ!?」 「何を慌ててるんだ?そう固い事言うなよ、一緒にメシ食わねぇか?」 「先約があるの!じゃあね!」 「ありゃ。先約ねぇ…あいつが…」 邪魔者を振り払い、屋上へ向かう。階段の上り下りのツラさを改めて実感した。空手部はスゴイや…。 「お〜い、春〜」 「んにゃ?あ〜、こ〜ちゃんだ〜」 「お腹減ってるよね?パン買ってきたから食べなよ」 「うわぁ〜、ラーメンパンだ〜」 「それ…ラーメンじゃなくてヤキソバ…」 「ありがと〜。いただきま〜す」 「き、聞いちゃいない…まぁいいや」 2つあるパンのうちの1つを春に渡し、ひなたぼっこをしながら昼食を取る。天気が良い、快晴だ。 「ねぇ、春」 「な〜に?」 「いや…その、色々と聞いておきたい事とかあるからさ」 「なんでもきくよ〜」 「自分の血液型とか…わかる?」 「え〜っと…わかんない…」 「そっか。誕生日は?」 「たんじょうび?」 「自分が生まれた日の事だよ。生年月日とも言うんだ」 「う〜ん…わかんない」 「となると、自分の歳もわからない?」 「うん、わかんない」 「ボクと同年代に見えるし…とりあえず同い年って事にしておこうか」 「わかりました〜」 パンもすっかり食べ尽くし、会話を続けた。 「でさ。キミ、人形なんだよね?なんでヒトの名前があるの?」 「えっとね〜…う〜んと…わかんない。きがついたら『穂村 春』っていうなまえがついてたから」 「なんだか不思議だね…じゃ、自分の出生の事とかもわからないわけだ」 「うん。きがついたらおにんぎょうさんになってて、いろんなヒトのてにわたって、キズついて、すてられて」 「春…」 「あのコたちにいじめられてるときにこ〜ちゃんがたすけてくれて、ひろってくれて、ママさんにキレイにしてもらって。とってもカンシャしてるよ。それでね…『おんがえしがしたい』ってつよくねがったの。そしたらこ〜なったんだよ〜」 「じゃあ、自分の意のままに人形と人間の姿を操作できるわけじゃないんだ?」 「そだよ〜」 「世界はなにがあるかわからないね…その証拠として現にキミがいるわけなんだから」 「あたしもよくわからないよぉ。でも、こ〜ちゃんにおんがえしができればそれでいいもん」 「単純だな、キミも…」 「それほどでもないよ〜」 「誉めないって…。っと、そろそろ教室に戻らないと。また放課後に来るから」 「ふあ〜い」 春の事…よくわかった気がする。人形が人間になる…そんな不思議な現象も、本人は気にしていないようだ。 きっと、ボクに恩返しがしたいという純粋な思いが起こした奇跡なんだろう。信じ難いけど。 … 時は放課後。部活動をしている人は部活に行き、帰宅部の人は家に帰る。 (うへぇ〜、終わった終わった。春を迎えに行かないと) 教室から屋上へ再度直行する。と、そこへまたザ・邪魔者が。 「よぉ進藤、一緒に」 「一緒に帰らないよ!じゃあね!」 「ありゃ。なんともそっけないヤツだ」 即座に邪魔者を振り払い、屋上へ向かう。やっぱり階段の上り下りは大変だなぁ…。空手部を尊敬。 「お〜い、春〜。帰るよ〜」 「ふやぁ…うゆ〜…」 「ね…寝てる…。太陽の光がそんなに気持ち良かったのかな?お〜い、起きろ〜。帰るよ〜」 「…へにゃ?あ〜、こ〜ちゃん…おやすみぃ…」 「おやすみぃ…じゃない!起きろってば!」 「うぅ〜…眠いよぅ…」 「眠いなら家に帰ってからいくらでも寝ていいから!」 「ふあ〜い…ふやぁ…むにゃ…」 「まったく…」 おねむの春をなんとか起こし、校舎を出る。問題はあの鬼顧問に見つからなければ… 「ごるぁ進藤!なにやっとるかぁ!!」 「げげっ…さっそく見つかった…」 「まさか2日連続で逃げ出そうとするとはなぁ。いい度胸じゃないか?ん〜?」 「えっと…その…こ、このコが迷子になっていたんで、家に帰さないといけないんですよ」 「そんなもんオマワリにまかせんかい!」 ダ、ダメだぁ!絶対に逃げられっこない!困った、困ったぞ。 「ねぇ〜オジさぁん」 「なんだ?迷子の嬢ちゃん」 「あたしね〜、こ〜ちゃんといっしょじゃないとかえりたくないのぉ。だからぁ…ダメかなぁ?」 「ぬぐ…」 (ナ、ナイスだ春!この鬼監督は女子に弱いんだ!押せ!押し返せ!!) 「むぅ…しょうがない。今日は特別に許してやろう」 「わぁ〜い。オジさんありがと〜」 「う…ほ、ほれ、さっさと家に送ってってやれぃ」 「わかったわかった、わかりましたよ。行くよ、春」 「ふあ〜い」 最大の難関も春のおかげでなんとか切り抜ける事ができた。地獄に仏? 「ありがと、春。助かったよ」 「おんがえしになったかなぁ?」 「うん、恩返しになったよ」 「よかったぁ、こ〜ちゃんのやくにたてて」 「これで朝もまともに起こしてくれればいいんだけどなぁ…」 テフテフとゆっくり歩きながら家に着いた。 「ただいま」 「おかえりなさい。今日は早いのね」 「部活なかったからさ。…って、春!玄関で寝るなぁ!!」 「はゅ…むにゅ…」 「あらあら。晃太、2階までおぶってあげなさい」 「はぁ〜い…」 おぶった時に服ごしに感じた、春の肌の温もり。とても春が人形とは思えない。春はヒトなんだ。 春をボクのベッドに寝かせ、1階へと降りる。夕飯はカレーのようだ。 「いただきます」 「はい、めしあがれ」 母さんとボク。普段の食卓にはこの2人しかいなかった。これが普通だった。 「…ねぇ、母さん」 「なにかしら?」 「春の事…なにも聞かないの?」 「なにって?」 「ボクとの関係の事とか、年とか、学校とか…色々」 「聞いたところでどうなるわけじゃないわ。あなたの友達、それがわかっていればいいもの」 「図太い神経だこと…」 「それにね。お父さんが単身赴任してから、晃太と2人でさびしかったじゃない?」 「うん…まぁ」 「あのコが来てから、食卓がとても明るくなった気がするの。娘ができたみたいで嬉しいわ」 「ふ〜ん、娘ねぇ」 寛大な心を持ったいい母さんだ、自負してしまうよ。裏を返せば…無神経? 夕飯のカレーも食べ終わり、昨日と同じ布団で横になり、眠りについた。 [ 永遠の春 降雨 ] [ 戻る ] |
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