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永遠の春 降雨 作者:レート
「こ〜ちゃん、おきてよ〜」 「…」 「こ〜ちゃ〜ん、チコクしちゃうよ〜」 「…」 「うぅ〜。え〜い」 「………ぅぐはっ!?」 「おきた〜?」 「『おきた〜?』じゃない!ボディプレスなんてするなぁ!」 「だってぇ、こ〜ちゃんおきてくんないんだもん…」 「頼むから…普通に起こして…」 「ふあ〜い」 1階へ降りると、朝食のいい香りが食欲を誘う。 「おはよう、2人とも」 「おはよ」 「おはよ〜ございます、ママさん」 ささっと朝食を済ませ、学校へ向かう。もちろん春も付き添いで。…なんだか雲行きが怪しい。 「春、今日も屋上?」 「もちろんだよ〜」 「天気悪いけど、いいの?」 「だいじょぶだよ〜」 「ホントに?」 「だいじょぶだってばぁ〜」 「そう…(ちょっと心配だなぁ…)」 学校に到着、春を屋上へ送り出す。やっぱり心配だ…。 「ムリに学校にいなくてもいいんだよ?」 「ダメだよぉ〜、おんがえししなくちゃいけないもん」 「うん…じゃ、ボクは教室に行くから…」 「ふあ〜い」 …授業中。勉強に集中しようとするが気が散漫して集中できない。春が気になる。 こんな空一面が暗闇の雲で、今にも雨が降りそうな天気…って、雨降ってきたぞ。 春が雨に打たれてカゼなんてひいたらどうしよう…困ったなぁ…。 …昼休みになると、ボクは屋上へ猛ダッシュ。屋上のドアを勢い良く開けると雨の湿ったニオイがした。 「春っ!」 「あぅ〜…こ〜ちゃ〜ん…」 ビショ濡れになって立ちすくんでいるか弱い女のコが一人、屋上にいた。 「あ〜あ、こんなに濡れちゃって。だからあんなに忠告しといたのに」 「だってぇ…」 「とにかく軒下にいないとダメだよ、室内にいよう」 「うん…」 屋上から校内に入り、薄暗い階段の袂に避難した。ひと気は全くない。 「とは言ったものの…どこに春の身を置いておけばいいんだろ…。濡れたまま校内に入れるわけにいかないし…」 「あぅ〜…」 こうしている間にも春の身体は冷えていってしまう。どうにかしないと…困ったなぁ…。あ、そうだ。 「春、ちょっと待ってて!」 「はぇ?」 「頼りがいのあるオジさんに頼んでくるから!」 そう言ってボクが向かった先は校長室。…出来る限り走ってやってきたが、どうやら校長はいないらしい。 諦めて春の所に帰ろうとすると、職員室から出てきた校長先生と出くわした。 「あ、校長先生」 「ん?おや、この前の生徒くんじゃないか。何の用かね?また頼み事?」 「は…はい…、そうなんです…」 「なんだか慌ててるみたいだね、聞いてあげるよん」 「前に連れてきた女のコが屋上にいたんですが、雨でビショビショになっちゃって…それで」 「着替えが必要なんだね?」 「え?あ…はい」 結構鋭いなぁ、ウチの校長。 「じゃあ保健の先生に頼んでジャージをもらっておくから、キミはここで待っててね〜」 「ありがとうございます」 …しばらくすると保健の先生がジャージを貸してくれたので、それを持って急いで春の元に戻った。 「春、お待たせ」 「うぅ〜…」 「これに着替えてね」 「ふあ〜い…」 ジャージを春に手渡してボクは階段を下りて中腹へ移動した。…女のコの着替えを覗くような事はしない。 数分後、春が動きづらそうに上から降りてきた。 「こ〜ちゃん…これ、うごきにくいよぅ…」 「仕方ないよ、他に着替えはないんだから。それでガマンしてね」 「うん…」 その後、春は校長の計らいで保健室のベッドで休む事になった。安静にしておかないと風邪ひいちゃうもんなぁ。 …放課後。保健室に向かうと、春はいつものワンピースでボクの迎えを待っていた。 保健の先生が洗って乾かしてくれたらしい。優しい先生だ………男だけど…。 そのまま春を連れて昇降口へ直行。学校に置いてある自分の傘を手に取り、とりあえず困ってみる。 「こ〜ちゃん、どしたの?」 「いや…1本しかないと思って…」 「はぇ?」 「1本しかないんじゃ、どっちかが傘を差さずに帰らないといけないから…」 「かさ、かして」 「はい?」 「か〜さ」 「どうするのさ?」 「かしてよぉ〜」 春に傘を手渡す。妙に嫌な予感がする。 「んしょっと…はい、これでだいじょ〜ぶ」 「これって…」 「あいあいがさ〜」 「これがイヤで困ってたのに…」 「ほらぁ、はやくかえろ〜よ〜」 「…しょうがない、急ごう」 嫌々ながら春と相合傘で家に帰った。恥ずかしい…。 「ただいま」 「ただいま〜」 「おかえりなさい」 パタパタと春がリビングへ入っていき、それを追って母さんがリビングに入ろうとした時、ボクが呼び止めた。 「母さん」 「はい?なにかしら?」 「春、学校でビショ濡れになっちゃってさ。だから風邪ひかないようにしてあげてね」 「わかったわ」 春の事は母さんにまかせて、ボクは2階の自分の部屋でグッタリしておく。 … 「こ〜ちゃん、ゴハンだよぉ」 「…」 「こ〜ちゃ〜ん、おきてよぉ〜」 「…」 「あ、そ〜だ」 と言いながらボクが寝ているフトンに潜り込む春。そして眠り出す。 「…ん?」 なにかに気が付いたボクが横に目をやると、春の顔がドアップ…ドアップ? 「うわっ!?」 「はぇ…?あ…こ〜ちゃん、おきた〜?」 「と、となりで寝るなぁ!」 「ど〜して?」 「どど、ど、どうしてって…だって…春の顔が目の前に…あ〜もう!とにかくとなりで寝るなぁ!」 「ふあ〜い…。こ〜ちゃん、ゴハンだよぉ〜」 「もう…普通に起こしてほしい…」 春はパジャマの上にカーディガンといういかにも病人のような服装をしていた。 それを見てちょっとドキッとしてしまったなんて、絶対に口外できないよ。 …少し遅い夕食をとった後、寝る前に春に聞いておかなければならない事があった。 「春、今日の事なんだけど」 「な〜に?」 「やっぱりさ、屋上にいたらダメだよ」 「う…」 「今日みたいに雨が降ったら大変だよね?」 「うん…」 「だったらムリに学校に来なくてもいいと思うんだ」 「う〜…」 すっかり落ち込みムードな春を見ると、どうにかしてあげたいと思う気持ちに駆られた。どうしてかな…? 「ガッコウにいたいよぅ…こ〜ちゃんのそばにいたいよぅ…」 「そう言われてもなぁ…」 「ね、こ〜ちゃん」 「ん?」 「あのやさしそうなオジさんにおねがいできないかなぁ?」 「やさしそうなオジさん?」 「うん」 「校長の事?」 「たぶんそ〜だとおもう」 「校長かぁ…そうだね、わかった。聞いてみるよ」 「よろしくおねがいしま〜す」 「じゃ、今日はもう寝よう」 「ふあ〜い。おやすみ〜」 「おやすみ」 …翌日、学校。春を屋上へ送り出す前に校長室へと連れていく。明暗や如何に。 「3-A組、進藤晃太、入ります」 「おろろ、また来てくれたんだねぇ?」 「はぁ…すいません」 「それで、今日はなんのお願いかな?」 「このコ…やっぱり教室に居たらマズイでしょうか?」 「そりゃあねぇ。なんともし難いんだよね」 「そうですか…」 「生徒なら全くノープロブレムなんだけどさ」 「生徒…?校長。このコ、生徒って事にしちゃダメですか?」 「おぉ!?それは名案だね!それなら全然OKだよ!」 「へ?そんな即決でいいんですか?」 「生徒のお願いならなんでも受け入れるからね〜」 スゴイ…こんな類い希な校長、初めて見たよ。 「でも…制服とか、どうするんですか?」 「んにゃ〜もぅ、そんなのいらないいらない」 「(校長の偉大さに圧巻しつつも)あ…ありがとうございます」 「相談ならいくらでも乗ったげるよ〜、また来てね〜」 校長室から退室。なんでウチの校長はここまでできるんだろ…。この学校の唯一の救いかも? 「というわけで。春、教室に居られるよ」 「ありがと〜、こ〜ちゃん」 「でもちゃんと勉強するんだからね?」 「べんきょ〜ってなぁに?」 「…知らないの?」 「うん」 「勉強っていうのはね、長い人生を生きていくために色々な事を学ぶ事なんだよ」 「はぇ〜」 「キミもボクと同じ生徒なんだから、自覚を持つように」 「ふあ〜い。…あ、こ〜ちゃん」 「ん?」 「セイトってなぁに?」 「…教室に行こう」 教室に到着。春の座る席はどこでも構わないらしいので、ボクの隣しかないだろう。ちょうど空いてるし。 道具はひとまずボクのを見せてあげれば問題はないと思うけど…。周りの目が…。特にこいつ、史哉。 「おい進藤!!誰だよそのかわいいコ!?」 「だ、誰でもいいじゃんか」 「良くない良くない!お前の恋愛相談役として放っておけるかって!!」 「いつから恋愛相談役になったのさ?」 「今日からだ」 「…」 「な、誰なのよこのコ?どこで知り合った?」 「知り合ったって…別に彼女とかそんなんじゃないよ」 「俺がいつ彼女かどうかなんて聞いた?」 「う…」 「やっぱりそうなんだな?」 「あ〜うるさいなぁ!あっち行け!」 「いいよ〜だ、このコに直接聞くから」 「コ、コラ!」 史哉はボクの言う事など見向きもせず、春に興味津々。 「キミ、名前は?」 「アナタ、だ〜れ?」 「俺か?俺はこいつの恋愛相談役の金子 史哉だ!」 「れんあいそうだんやく?」 「胸がドキッとしてキュンっとした時は俺に相談すれば一発解決だ!」 「ん〜…よくわかんない」 「ぐはっ」 「あたしは『穂村 春』です、よろしくおねがいします」 「へぇ〜、春ちゃんか。こいつとの関係は?」 「こ〜ちゃんとあたし?」 「そうそう」 「あたしがこ〜ちゃんに付き添って恩返しするの〜」 「そうかそうか、恩返しか。…って、付き添うって…ま、まさか、一つ屋根の下で一緒に?」 「そだよ〜」 「な、な、な、ななななな…なにぃ〜!?」 史哉が突然ボクの胸倉を掴んだ。もちろん本気じゃなく、勢いで。でも目が笑ってない、ヤバイぞ史哉。 「おいおい進藤、お前これどういう事だ?俺に相談もなく異性と同棲とはどういう事だ?」 「ちょ、ちょっと待って、早合点するなってば。色々な事が重なってこうなっただけだよ。それに同棲じゃなくて居候」 「居候?」 「そう、居候。春がね」 「それでも同棲に変わりはないよな?な?な?」 「し、しつこいって!そんなんじゃないって言ってるじゃないか」 「…納得いかないが、そういう事にしとこう」 「史哉。この事を他人にバラしたら友達の縁、切るからね」 「わかってますって」 なんとか一段落したけど、問題はまだある。春の博識ぶりを調べておかないと勉強にならなそうだ。 「春、問題を出すよ」 「なぞなぞ?」 「そうじゃない、足し算だよ」 「たしざん?」 「数字と数字を足していくつになるか、って計算の事」 「はぇ〜、そ〜なんだぁ〜」 「じゃあ手始めに…15+29は?」 「え〜っと…」 口に指を当てて目を斜め上に向け、深く深〜く考え込む春。…いや、悩む問題? 「わかんない」 「じゃ、12+12は?」 「え〜っと…」 先ほどと同じポーズで深く深〜く考え込む春。…いや、悩む問題? 「わかんない」 「…だったら、5+5は?」 「え〜っと…」 先ほどと同じ…(以下略) 「わかんない」 「…1+1は?」 「え〜っと…」 先…(以下略) 「3…かなぁ?」 「惜しい。2だよ」 「がっかり…」 「足し算の勉強からがんばろうか?」 「うん」 春は急きょボクがノートを破って書き出した「足し算問題集」を使って勉強することになった。 もちろん小学生レベルの。今まで人形だったんだから仕方ないだろうけど…なんで言葉は喋れるんだろ? まだまだ謎が多いなぁ。あ、そうだ。春に言っておかないと。 「春、言っておく事があるんだ」 「なぁに?」 「ちょっと耳貸して」 「うん」 「キミが人形だって事と、ボクと暮らしてる事、誰にも話しちゃダメだからね?」 「ど〜して?」 「どうしても!」 「ふあ〜い…」 …授業が始まっても春は独学で足し算の勉強を続けている。制服未着衣+白のロングヘア+授業科目無視。 ヘタしたらそこらへんの不良と変わらないかもしれないが、この容姿からしてそう思う者は誰一人としていないはずだ。 そんな春が物珍しいのか、他の生徒、各教師が一様に春を見て目を丸くする。珍しいだろうな、そりゃ。 なんてったって校長が直接許可を出した特別許可臨時入学生だからね。 …放課後。部活はどうしたものだろう、最近はサボってばかりだからなぁ。たまには顔を出そうか? でも春はどうする?まだ一人では帰れないと思うし、ボクと一緒に居るって言うだろうし…。 「ボクは部活に行くけど…春はどうする?」 「こ〜ちゃんといっしょ〜」 「やっぱり…」 「いっしょ〜」 「しばらく部活やってるよ?それでもいいの?」 「ひなたぼっこ、できるかなぁ〜?」 「もう夕暮れだからムリだと思うけど…」 「うきゅ〜…」 「家への道、覚えた?」 「わかんない…」 「う〜ん…しょうがない、帰ろうか」 「ダメだよぉ〜。ブカツって、サボっちゃいけないんだよねぇ?」 「いいんだよ、別にサボっても」 「ならいっしょにかえろ〜」 「うん、帰ろう。お腹も空いたし」 部活、サボっていいわけじゃないんだけどね…。とりあえずウチに帰ろう。 [ 永遠の春 遠出 ] [ 戻る ] |
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