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永遠の春 風邪 作者:レート
「…あれ?」 いつもなら春が奇怪な方法でボクを起こすはずが、今朝は自然に目を覚ました。ちなみに今日は日曜。 「春?」 気になりベッドを覗いた。まだ眠っている。でも…なんだかいつもと様子が違う。 寝顔を覗きこんでみると、やや顔が赤い。ほてっていて上気しているように見て取れる。 少し照れはするが、春のオデコに手を当ててみた。熱い、通常では有り得ない熱を帯びている。 この時点で風邪を引いている事は一目瞭然だった。1階に降り、母さんにその旨を伝える。 「母さん。春、風邪ひいてるみたいなんだ」 「え?あらあら大変。この前の雨の冷えが残ってたのね」 「風邪薬、ある?」 「救急箱の中にあると思うわ」 棚の上に置いてある救急箱を引っ張りだし、中を無造作に探す。いくら探しても薬は見つからない。 「母さん、薬ないよ」 「困ったわねぇ…よりにもよってこんな時に切らしてるなんて…」 「ボクが買ってくるから、春は頼んだよ」 「そうね、お願いするわ」 サイフを持って近くのドラッグストアへひとっ走り。恥ずかしながらボクは自転車に乗れないんだ。 自分の自転車はあるにはあるが、小学生低学年向けの小さい自転車。乗れるはずもない。 自転車に乗る練習中に思いっきり転んで、その時に当たり所が悪くて大怪我、入院。それ以来かな。 練習すれば乗れるようになるかもしれないけど…と考えている間にもう高校生だ。練習、しないとなぁ…。 …ドラッグストアに到着。風邪薬をストック分も含めて多めに買い、急いで家に戻る。スポーツドリンクも買っておいた。 「ただいま〜」 わかっているが返ってくる声はない。そのまま春が寝ている自分の部屋へ直行。 「春」 「あ…こ〜ちゃん…」 氷枕でオデコに濡れタオル、パジャマに着替えて温かくして風邪対策はバッチリな春が横になっている。 「母さんは?」 「おかゆつくってくれてるよ〜」 「おかゆか…。あ、風邪薬買ってきたから飲まないと」 「ふあ〜い」 あらかじめ母さんが持ってきていた水をコップに注ぎ、春が薬を飲む。ゴックン、と生々しい音が聞こえた。 「ぷへぇ〜、のんだよ〜」 「水分もたっぷり取って、早く治るように」 「うん」 「この前雨に打たれたのが随分と後をひいちゃったみたいだね」 「うきゅ〜…」 「昨日動物園に行って悪化しちゃったんだ。ムリしない方がいいよ」 「わかりました〜」 ひとまず1階に降りようとすると、リビング前で母さんと出くわす。 「晃太、お薬は?」 「飲ませといたよ」 「そう。ごくろうさま」 「そのおかゆ、早く春に食べさせてね」 「もちろんよ」 母さんがボクの部屋へと向かい、ボクは食卓に座ってボ〜ッとしてみた。 気が付いたらお腹が空いている事がわかった。母さんは春の看病してるし…まいったな…。 ボケ〜ッとテレビを見ながらヒマを潰す。つまらない、日曜の朝のテレビはどれもつまらない。 そこへ母さんが来た。なにやら忙しそうだ。 「晃太、春ちゃんの看病お願いね」 「へ?な…なんでボク?」 「これからお父さんを空港まで迎えに行かなくちゃいけないのよ」 「父さん、帰ってくるの?」 「1週間の一時帰宅よ。言ってなかったかしら?」 「初耳だよ」 「とにかく春ちゃんはお願いね」 「は〜い…」 少し肩を落としながら部屋に向かった。 「春、だいじょぶ?」 「うん」 「母さんは用事ででかけるから看病はボクがするよ」 「ママさんからきいてるよ〜」 「ノド渇いてない?」 「へ〜きだよ〜」 「なにかあったら呼んでね、すぐ来るから」 「はぇ?いっちゃうのぉ?」 「…行っちゃうって?」 「ここにいてよぉ〜」 春にそう言われて少し複雑な気持ちになった。どんな意味でその言葉を発したのか。 側に居て欲しいからなのか、それとも単に便宜のためにボクをここに常駐させたいからなのか。 色々な考えが交錯し、戸惑い、困惑する。春のたった一言で何故だか頭の中は大混乱。 「こ〜ちゃん?」 「…」 「どしたの?こ〜ちゃん?」 「…ん?」 「めがうつろだよ〜」 「あ…ごめん、ボ〜ッとしてた」 「ここにいてくれる〜?」 「うん、もちろん」 「よかったぁ〜」 あれ?どうして了承しちゃったんだ?なんで?あんなに迷ってたじゃないか?まぁいいか…。 …部屋で春とボクの二人。なにもせず、ただ時間だけが過ぎていく。 「こ〜ちゃん」 「なに?」 「ノドかわいた〜」 「ちょっと待って。…はい、水」 「ありがと〜」 春が身体を起こすと、オデコにあった濡れタオルがベッドに落ちた。ボクはそれを取って、洗面器の水に浸した。 その間に春がイッキに飲み干し、ぷはぁ〜と息を吐く。ボクにコップを手渡して再び横になった。 何食わぬ顔でボクが手に持っている濡れタオルを春のオデコに置くと、春がタオルの冷たさに少しビックリする。 「つめた〜い」 「母さん、これ氷入れ過ぎだよ。うへぇ〜、手が冷たい…」 「ホント〜?」 と言いながら春は、さっきタオルをオデコに置いたボクの手を取り、冷たさを確認している。 「ホントだ〜、つめた〜い」 「春…手、離して…」 「はぇ?ど〜して?」 今まで女のコとまともに会話した事もないボクが、その女のコに手を触れられている。これ以上に恥ずかしい事はない。 とはいえ「恥ずかしいから離して」なんて言うのもまた恥ずかしい…どうしたものか、この状況。 状況打破に頭脳を振り絞っていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。こんな時に来客? 「おきゃくさん?」 「…みたいだ」 ボクの手を握っている春の手の力が弱まり、手を抜こうとするとスッと抜けた。そのまま玄関へと向かう。 ガチャッという音とともに現れたヤツ…。史哉。状況打破は感謝するが、なんでこいつなんだ。 「進藤、カラオケ行かないか?」 「行くわけないだろ!今はそれどころじゃないんだってば!」 「おいおい、そんな邪険にするなよ。そうだ、お前と春ちゃんの愛の巣を見せてくれよ」 「へ、変な言い方するな!春は今風邪ひいて寝こんでるんだから邪魔しないでよ!」 「邪魔?お前…まさか病に倒れ、弱りきった春ちゃんにあんな事やこんな事を…」 「なっ…そ、そんなわけない!もう用はないだろ!?さっさと帰れ!!」 思いっきり力を込め、ぶっきらぼうにドアを閉める。はぁ…全く、なんでいつも史哉はああなんだ…。 部屋に戻って春を名を呼ぶが、反応がない。どうやら眠ってしまったみたいだ。そっとしておこう。 … ふと気が付くと、時刻はすでに午後3時。ボクも眠ってしまったらしい。あれ?春はどうした? 「春?」 「こ〜ちゃん、おきた〜?」 「ごめん…眠っちゃって…。ノド、渇いてない?」 「ん〜、ちょっとかわいた〜」 「水…はもう氷溶けちゃったか。氷入れ直してくるから待ってて。あ、スポーツドリンクも持ってくる」 「ふあ〜い」 1階に降りて水の入ったボトルに氷を入れ直す。冷蔵庫の中に入っていたスポーツドリンクも取り出して2階ヘ。 「持ってきたよ」 「ありがと〜」 春に水を飲ませて一段落し、沈黙の空気が漂う。そこにボクがポツリと呟いた。 「母さん、遅いなぁ」 「ママさんどこにいったの〜?」 「父さんを迎えに行ったんだ」 「パパさん?こ〜ちゃんのパパさん?」 「そうだよ」 「こ〜ちゃんのパパさん、どこかいってたのぉ?」 「単身赴任で大阪に行ってて、今日から1週間だけ帰ってくるんだ」 「はぇ〜」 「春はもちろん父さんには会った事ないよね?」 「ないよ〜。どんなひとなの〜?」 「どんな人とは一概には言い表せないけど…厳しい時もあれば優しい時もある、いい父親だよ」 「あってみたいなぁ〜」 「…あっ」 「どしたの?」 「大丈夫かな…春がウチに暮らしてるって事」 「だいじょぶだよぉ〜、きっと〜」 「だといいけど…」 … 数時間後、呼び鈴が鳴った。玄関へ向かいドアを開けると、母さんと父さんの姿があった。 「おかえり。父さん、母さん」 「元気にしてたか?晃太」 「うん、元気にやってるよ」 「…ん?」 父さんが靴を脱ごうとして足元に目をやると、見慣れない靴に気付き疑問を抱く。 「晃太、誰か来ているのか?」 「え?あ、いや…その…」 危惧であったその事に触れられて慌てふためいていると、母さんがフォローを入れる。 「お父さん、帰る途中に話したでしょう?」 「ん?…あぁ、あのコの事か」 そのまま父さんと母さんは何事もなかったかのようにリビングへ歩いていった。…フォローじゃなくないか? なにかがおかしいと思い、料理をしている母さんにコッソリと話を聞いた。 「母さん、父さんに話したの?」 「もちろんよ」 「それで…父さんは?」 「なにも言ってないわ」 「へ?」 「あ、こう言ってたわ。娘ができたみたいで嬉しいって」 「なるほど…似たもの夫婦ってわけね…」 父さんと話したい事はたくさんあるが、春が困っているかもしれない。 あまり長い事離れてちゃいけないな。部屋に戻ってまた看病をし始める。 「パパさんかえってきたの〜?」 「帰ってきたよ」 「あってみたいよぉ〜」 「今はダメだよ。春、風邪ひいてるんだから」 「ふあ〜い…」 「父さんが見たかったら早く治るようにがんばる事。いいね?」 「がんばりま〜す」 今日は数ヶ月ぶりに3人の食事…となるはずだったが、ボクは春の看病があるから不可能。 それに父さんと母さんの時間を邪魔するのは親不孝だ。だから部屋で春と一緒に夕飯を食べた。 明日は4人で食卓を囲めればいいな。…4人?どうしてボクは4人で食べる事を望んでるんだろ? 春が家族の一員として馴染んできたからかな?どうなのかなぁ…。 [ 永遠の春 守護 ] [ 戻る ] |
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