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永遠の春 守護 作者:レート
「こ〜ちゃん、おっきろ〜。あさだよ〜」 「ん…」 「こ〜ちゃんてばぁ〜、おきてよぉ〜」 「…」 「うぅ〜…あ、そ〜だ」 眠っているボクの顔をこれでもかというくらいにイジり倒す春。目を釣り上げてみたり、鼻をつまんでみたり。 「…んん?春?」 「こ〜ちゃん、おきた〜?」 「今、なにかしてなかった?」 「してないよ〜」 「そっか…。風邪は大丈夫?」 「なおったよ〜」 「ん、よかった。でもムリはしないように、今日は家で安静にする事」 「え〜?ヤだヤだ〜、こ〜ちゃんといっしょ〜」 「ワガママ言っちゃダメだ。風邪がブリ返しちゃったら学校に行けなくなるよ?」 「うん…」 春もなんとか動けるようになったらしく、今朝は4人で朝食をとる。 「お、キミが噂の居候くんか。なかなかかわいいコじゃないか。私が晃太の父親の『鷹夫』だ、よろしく」 「はじめまして、『穂村 春』です。よろしくおねがいします、パパさん」 父さんと春の初対面の挨拶も済み、朝食を済ませた。学校へ行く準備も済ませる。 さぁこれから出発だという時に春がボクの学生服をガッシリと掴む。…予想はしていたけど。 「こ〜ちゃん、つれてって〜」 「ダメだよ、病み上がりなんだから安静にしないと」 「うぅ〜…」 「明日からなら連れてってあげるから、今日はなにがなんでもガマンするように」 「ふあ〜い…」 悲しそうな春を背に、学校へと出発。 …何事もなく到着、教室へ。そこへザ・邪魔者が。 「おい進藤、春ちゃんはどうした?」 「史哉…そんなに春が気になるの?」 「当たり前だ。お前のお目付け役の俺が相手の心配もしないでどうするんだ」 「お目付け役なんじゃなくて目を付ける、の方が正しい表現なんじゃない?」 「ま…まぁまぁ、ともかく春ちゃんはどうしたか教えてくれって」 「風邪は治ったけど油断は禁物、今日は家でゆっくり休ませてる」 「残念だなぁ…春ちゃんのかわいい笑顔を見ると今日もガンバルぞ!って気になれるんだけど…」 「ならなくてもいい」 「つれないヤツだなぁ…」 …時は昼休み。雲の一欠片も見えない晴天、快晴。やわらかい日差しが絶えず降り注いでいる。 教室のベランダから空を見上げているとなんとなく気分的に、屋上でパンでも食べようと思った。 学食でパンを買って屋上へと向かい、ドアを開けた。そこには見覚えのある少女が足を伸ばして座っていた。 「…春?」 「あ〜、こ〜ちゃんだ〜」 「いつの間に来てたの?来ちゃダメだって言ったじゃないか」 「だってぇ…」 「まぁ、済んだ事をどうこう言っても仕方がないか」 「ごめんなさい…」 ボクも春の横に腰を降ろし、空を見上げる。思わず笑ってしまいそうなくらい天気が良い。 このまま眠ってしまいたいくらい…太陽の光が気持ち良くて、心が晴れていく気がした。 「こ〜ちゃん…」 「ん?」 「おなかすいたぁ〜…」 春がボクの手にあるパンをじ〜っと見つめている。人気が高くて滅多に買えないピザパンを凝視している。 ボクも追うようにパンを見つめ、深く考える。 …ここでパンを独り占めしたら男は愚か人間失格だと確信した。 「半分コしよっか」 「いいのぉ?」 「だってお腹空いてるんでしょ?」 「うん…」 「じゃ、半分コ」 「ありがと〜」 パンの袋を開けてパンを2分し、片方を春に渡す。春は嬉しそうにパンを口にくわえ、はむはむと食べている。 「おいし〜」 「でしょ?ボクも好きなんだ、ピザパン」 半分でとても少量だったためすぐに完食。食休みを兼ねたひなたぼっこをしてみる。ぼぉ〜っと。 …何気なく春の方に振り向くと、横になって眠りこけている。マイペースだ、超マイペースガールだ。 そんな春の気持ち良さそうな寝顔を見ているとこっちも眠くなってきてしまって…………… … 「おい、進藤。起きろ」 「…へ?ふみや?」 「なに春ちゃんと仲良く屋上で昼寝なんかしてんだぃ。もう放課後だぞ」 「…?」 イマイチ状況が理解できなかった。寝ボケていたせいもあり、グルグルと考え込み、やっと答えに行きつく。 「ボク、ここで寝てた?」 「イビキかいて爆睡してたぞ」 「…じゃあ、授業サボったって事?」 「昼休み以降は全てな」 「あ〜…やっちゃった…」 「先公には腹痛でトイレに行ってる事にしといたからな」 「ありがと、史哉。助かったよ」 「その見返りと言っちゃ〜なんだが、お前と春ちゃんの愛の巣、見せてくれよな?」 「…春?春は?」 くるっと後ろを向くと、未だぐっすりと眠りこけた春が横になっていた。ハイパーマイペースガールだ。 「お〜い、春〜。帰るよ〜」 「…はゅ…?こ〜ちゃん…?」 「春、帰るよ。日が暮れちゃう」 「ふあ〜い…むにゃ…」 足元フラフラで今にも眠ってしまいそうな春を連れ、帰宅。史哉がなにかお願い事をしていたような気もするが。 …翌日。カンペキに風邪の治った春を連れて学校へと向かう。 相変わらず春はボクの作った足し算問題集に悪戦苦闘。1+1という超難問をやっと突破できた程度だ。 「こ〜ちゃん、これむずかしいよぉ〜」 「簡単だよ。1+2だったら、1が3つあるって事なんだ。わかるでしょ?」 「え〜っとぉ…いちがみっつ、いちがみっつ………わかんないよぉ〜」 「1+1は?」 「にぃ〜」 「1+1+1は?」 「え〜っとぉ…さん?」 「そうだよ。じゃあ1+2は?」 「…さん?」 「うん、正解」 「わぁ〜い、できたぁ〜」 「他の問題もこんな感じで解いていけるんじゃないかな?やってみなよ」 「ふあ〜い」 高校生にもなって足し算を事細かに人にレクチャーする自分が少し空しくなった。 ボクだってそれなりの学はあるさ。ない人よりは自信がある。でも足し算って…基礎じゃん…。 …昼休み。ボクが学食にパンを買いに行き、春は先に屋上へと向かった。 学食でパンを買い屋上へ向かう途中、史哉が険しい顔でボクに話し掛けてきた。 「進藤、マズイぞ」 「なにが?」 「D組の木梨達が屋上に行ったみたいだ」 「…ホント?」 「あぁ、この目で見た」 ボクは何も考えず、屋上に向けて走り出した。 「あっ、おい!進藤!?」 3-D組の木梨と言えば校内で知らない人はいない、劣等不良生徒だ。その中でもタチの悪い部類に入る。 その連中が屋上へ向かった。独り屋上にいる春がターゲットにされる事は間違いない…急がないと! …その一方、屋上の春。 「こ〜ちゃんまだかなぁ〜」 そこへやって来た木梨率いる不良連中。やって来るなり春に視線が集まる。 「おっ?なんだアイツ?見かけねぇヤツだな」 「よく見たらかわいいじゃねぇか…へへ、ちっと遊んでやるか」 不良グループは春に歩み寄り、春をチャカす。 「あなたたち、だ〜れ?」 「オレ達?オレ達はキミと良い事しようとする愉快な愉快なオオカミだよ〜♪」 「いいこと〜?」 「そう、良い事♪だからちょ〜っと大人しくしててくれるかな〜?」 「…ヤだ、めがこわいもん」 「あぁ?テメェ、人が下手に出てりゃイイ気になりやがって…!」 「うぅ〜…」 春が身を強張らせている。逃げようにも取り囲まれていて退路はない。大ピンチである。 と、そこへ間一髪ボクが登場。息を切らして学ランは乱れ、慌てて走ってきた様子が伺いし得る。 「お前らっ!春に手を出すな!!」 「なんだぁオメェ?こいつの男か?まぁいい、今オレ達は機嫌が悪いんだ。覚悟はできてんだろうな?」 「くっ…」 …ふと気が付くとそこは保健室のベッド。目の前には無機質な白い天井、そして心配そうな春の顔。 「こ〜ちゃん、いたくな〜い?」 「…ちょっと痛い」 もちろんボクは袋叩きにされ、全身ボロボロ。ヤツらはしらけてどこかに行ってしまい、春には手を出されずに済んだ。 「春、なにもされてない?」 「うん」 「よかった…」 「よくないよぉ…こ〜ちゃんオオケガだよ〜…」 「これくらい…痛くない…さ………イテテ…」 「…ありがとぉ、こ〜ちゃん」 「いいよ…お礼なんて」 「あたしがカゼひいたときのこ〜ちゃん、とってもやさしかったよ〜」 「そうだった?」 「ずっとそばにいてくれたもん」 「ん〜…自分でもよくわかんないんだ。早く治るように治るように…そう思ってたから」 「やさしいんだね、こ〜ちゃん」 「そんな事ないよ。…あ、そうだ」 「はぇ?」 「はい、パン」 「あ〜」 「買ってくるって約束したでしょ?」 「ありがと〜」 春になんとか死守したパンを2つ手渡す。 「あれ?こ〜ちゃん、たべないの〜?」 「口の中切っちゃったから痛くて食べられないんだ…」 「そっかぁ…こ〜ちゃん、かわいそう…」 「だからボクの分も食べていいよ。残しておいてもおいしくなくなっちゃうだろうし」 「いただきまぁ〜す」 春が口にパンを頬張りながら、ボクに問いかけてきた。モゴモゴしてて少し聞き取りにくい。 「こ〜ちゃん、ど〜してそんなにやさしいの〜?」 「優しくなんかないって。史哉には厳しく接してるし」 「あたしにはやさしいよ〜?」 「…そう…かもしれない」 「かもじゃないよ〜、そうなんだよぉ〜」 「なんかさ…ほっとけないんだ。捕まえてないとどっか行っちゃいそうで…遠くに行っちゃいそうで…」 「はぇ〜」 「あっ…な、なに言わせるんだよ!こんな事、言うつもりじゃなかったのに…」 「こ〜ちゃんがしゃべったんだよぉ〜」 「う…」 返事に窮していると、史哉がカラカイにやってきた。これこそザ・邪魔者だ。キング・オブ・邪魔者。 「進藤〜、ハデにやられたみたいだなぁ」 「あぁ…やられたよ」 「かっこいいねぇ、お姫様を助けに行くナイトってか?」 「そ、そんなんじゃないよ!」 「ムキになるって事は図星の証拠だぞ?」 「う…。なんで二人してケガ人を困らせたがるんだ…」 結局また午後の授業には参加できず。史哉は教室に戻り、春はベッドの横で足し算の勉強。 …放課後。ケガを押して帰ろうとするが意外にキツイ。春に肩を貸してもらい、なんとか帰宅できた。 「ただいま」 「おかえりなさい。あらあら晃太、すごいケガねぇ」 「あぁ…まぁ、ちょっと…。あれ?父さんは?」 「会社に行ったわよ。本社に用事があるって言ってたわ」 「一時帰宅だってのに大変なんだ…」 「お腹空いてるでしょ?お夕飯すぐに用意するわ。今日は唐揚げよ」 「うん、わかった」 ケガの痛みも少し和らぎ、歩けるようになってきた。家の中なんだし春のサポートはもういらないだろう。 「もういいよ。ありがと、春」 「どういたしまして〜」 「お礼と言っちゃなんだけど、ボクの分の唐揚げ食べていいよ」 「ダメだよぉ〜、こ〜ちゃんもおなかすいてるはずだもん」 「さっきも言ったでしょ?口の中切っててなにも食べられないって」 「うぅ〜…こ〜ちゃんとってもかわいそう…」 「だからあげるよ、ボクの分の唐揚げ」 「ふあ〜い。ありがと〜、こ〜ちゃん」 …他のみんなが夕飯を食べている間に、ボクは風呂に浸かり疲れを癒していた。ケガがしみる…痛い…。 「こ〜ちゃん」 「うわぁっ!?しゅ、春!?」 驚いた。春がボクの入浴中にドアを少し開けて、その隙間からヒョコっと顔を出して覗いてきたのだ。 「ケガ…だいじょ〜ぶ?」 「だだ、だ、だいじょ〜ぶだよ。ちょ、ちょっとしみるくらいだから」 「よかったぁ〜」 「そ、そそそ、それで、よよ、用は、な、なに?」 「ケガ、だいじょ〜ぶかなぁ〜って」 「そ…それだけ?」 「うん」 「ありがと…。でさ…もう用はないなら…その…か、顔…引っ込めて…」 「ふあ〜い」 お風呂のドアにカギ付けようかと思わされたよ。ホントに驚いたもん。 [ 永遠の春 公園 ] [ 戻る ] |
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