ヘビに案内されて数十分、ガーデンへと辿り着く。
「ここが…ガーデン…」
フレイがガーデン内部へ進入しようとすると、隠れていたモンスターがフレイにパンチを浴びせる。
だがフレイに当たる直前、何者かによってその拳は受け止められた。
「!?」
「早く行け、馬鹿弟子!こいつはワシが食い止める!」
「ジイさん!でも…!」
「早く行かぬかこの馬鹿弟子!急がねば唯殿の朝食を金輪際 口にできなくなるぞ!」
「…すまない、ジイさん」
フレイはガーデン内部へと入っていく。
「ワシの孫を…唯を頼んだぞ、馬鹿弟子よ…」
…
ガーデンに入ってもそこはまだ地下へと続く長い長い一本道。先の見えない道をひたすら歩く。
(俺はもう失いたくない…母さんはもういない…でも、唯はまだ生きてる。これ以上、大切な人を失いたくない!)
ただ歩き続け、見えてきたもの。とてつもなく広大な部屋。
その中央最奥には祭壇のような妙な装置に十字架に張りつけられた唯、そしてカインがいた。
「唯!」
「へぇ~、よくあのモンスターを倒せたね。誉めてあげるよ」
「カイン!唯を離せ!!」
「あ~もう、うるさいうるさい。作られた人間のくせにうるさいよ、キミ」
「…は?作られた…人間?」
「あれ?知らないの?キミは作られた人間、ガーディアンなんだよ?」
「…俺が…作られた…?ガーディアンは…作られた…人間…?」
「ヒーラーとずっと一緒にいても気付かなかったんだ?ヒーラーはその強大な力の影響で、長いこと側にいる人間になんらかの影響を与えてしまうんだ。だからヒーラーは人間との共存をなしえない一族で、このヒーラーだって人里離れた場所に暮らしてたでしょ?でもヒーラーは僕みたいな悪~い人間から身を守るような術は持ってないし、護衛を付けるにも人間が常に側にいられないんじゃお話にならないと。だから作られたのがガーディアンさ」
「じゃあ…俺の母さんは…?あのペンダントは…?」
「おやおや、かわいそうに。誰にも教えてもらえなかったんだ」
「…作られたかどうかなんて今の俺には関係ない!唯を離せ!!」
「しょ~がないなぁ、解放してあげるよ…な~んて言うと思った?」
「くっ…この野郎!!」
フレイがカインに斬りかかるが、見えない障壁に遮られて弾かれてしまう。
「あはははは!ムダだよ、このバリアの中には誰も入れないのさ!」
「くそっ…、唯を…離せ…」
「さ~て、僕は世界最強の力を手に入れよ~かなぁ~」
「やめろ…」
「あ、言い忘れてたけど、ヒーラーズウェポンみたいなヒーラーの力を利用した物はね、その物のためにヒーラー一人が犠牲になって力を全て注ぎ込むんだ。力を失ったヒーラーは二度と目を覚ます事はないよ」
「なっ…なんだと!?」
「さぁ『JACK』、僕の身体にみなぎるヒーラーの力を注ぎ込むんだ!」
その瞬間、カインの身体が七色に光りだし、あまりの眩しさに目を開けていられなくなる。
…光りが止んだ時、カインの姿は先ほどとは全く異なった奇怪な姿になっていた。
「あはは…あはははは…あっはっはっは!やった!やったよ!ついに僕は世界最強の力を手に入れたんだ!」
「くっ…」
「今 僕はとっても機嫌がいい。待っていてあげるから、ヒーラーと最期の時を過ごしなよ」
張りつけられていた唯の身体が宙に浮き、フレイの目の前にふわっと落ちる。
「唯…」
「…」
「唯…しっかりしろよ…」
「…」
「なぁ、唯…目を覚ませよ…」
「…」
「唯……唯……!」
冷たくなった唯の身体をそっと床に降ろし、ゆっくりと立ち上がる。
「お別れは済んだかな?特別に僕の力を最初にキミに見せてあげるよ」
「…許せねぇ…カイン…テメェだけは…テメェだけは許せねぇ!!」
怒り狂ったフレイは炎命を構え、カインに向かって何度も斬りつける。
「ムダだよ、この体障壁はそう簡単に破れはしないさ」
「だまれ!」
カインの言う事などに耳を傾けず、フレイは無心にカインに剣を振り続ける。
「全く、ムダだと言ってるのに………ん?」
炎命が白熱化し始めた。まるでフレイの怒りに呼応するかのように。
「まさか…これは…!?」
「うおぉぉぉぉぉお!!!」
フレイが力を込め、カインに向かって斬った。その剣筋には激しい炎が舞っている。
即座に回避したカインだったが、体障壁はもろくも崩れ去った。
「これは…炎命が覚醒したというのか!?まさか…FLAME HEART…!?」
そう言いながら後ずさりをしていくカインに、フレイがだんだんと追い詰めていく。
「ぅ…うわ…く、来るなぁ!」
カインがフレイに対しておびただしい数の魔法を放つが、覚醒したフレイには効果がない。
「くそ…どうしてだ!?世界最強の力を得たはずの僕が…どうしてガーディアンなんかに!?」
「カイン、お前はわかっていない。そんな力では世界を滅ぼす事はおろか、俺すら倒せない」
「そんな事はない!僕は世界最強なんだ!」
「この世に世界最強なんてものはいらないんだ…大切な人を守ろうとする気持ちがあればいい」
「そ…そんなの僕にはわからないよ!」
「お前も…旧大戦の被害者なのかもしれないな」
「そうだよ!僕は被害者なんだ!だからさ、殺さないでくれよ!ね?」
「…唯を殺した罪。統治長を襲った罪。他に罪はたくさんある。お前は罪を償うんだ」
「ひっ…!」
「だが、殺しはしない。いつか先の未来まで、お前を眠らせる」
「ヤだ…ヤだよ!助けてくれよ!お願いだよ!」
「…『炎封』」
炎命の剣先から溢れ出る炎がカインを球体の形に包み込む。
「いくら敵でも、人が死ぬのは辛いからな…」
フレイが唯の元へと歩み寄り、冷たくなった唯の身体を抱え上がる。
「唯…」
フレイはそのままガーデンの外へと歩き出した。