ピンポーン。
「はーっくしょん!」
パーカーにジャージを履いたごく普通の若い男性がご来店。
普通じゃないのは、そのくしゃみの回数。
お店に入るや否や一発してからというもの、五歩に一歩はくしゃみをしている。
花粉の季節というわけでもないし、風邪を引いているにしてはしっかりとした足取りだし…。
持病だろうか。
私は平凡なので病気という病気は持っていないし、おたふく風邪やはしかはもう経験している。
どうせ辛いのなら一気に辛くなってさっさと治せてしまえればそれが一番なのだけれど、軽い症状が続くというのは本当に辛いと思う。
眼鏡なんかもそうで、一時何も見えなくなるけど治ってしまえばなんともない、とかそんなものであればいいのに。
ちなみに私は裸眼で1.0。
普通です。
…視力の話じゃなくて。
男性はボックスティッシュと保湿ティッシュとマスクとリポビタンDを持ってカウンターに置いた。
ん?
嫌な予感がするのだけれど。
「はーっくしょん!」
男性は、私の目の前で思いっきりくしゃみをした。
男性と私の身長差だと、若干斜め下方向に向けられたくしゃみはちょうど私の顔に命中する。
命中した。
「あ…、すいません」
…。
泣きたい…。